ダイジョーブじゃない手術を受けた俺160

 新フォームの完成からおよそ1ヶ月が経過した。
 その期間で他校の選手を含めて色んな相手に試させてもらったが、どんなバッターにも通用することが証明されている。
 投げれば投げるほど動きに磨きが掛かっていく気がしていて、今の俺は絶好調だ。
 特にフォーシームのストライク率が凄まじく、ポンポン三振が奪えるのでテンポの良いピッチングが出来ていた。

 投げ方ひとつでここまで変わるのだからやはり野球は奥が深い。
 大会前に新しい変化球を覚えるつもりでいたが、この分だとそこまで焦らなくても大丈夫かもしれないと思い始めたほどだ。
 一応、新球種は近いうちに手を出すつもりではあるんだけどね。

「そろそろ夏の合宿が始まる時期だな。去年の地獄を思い出すと憂鬱になる……」

 御幸がそう言うと倉持が大きく頷いた。
 そして俺もこればかりは同意せざるを得ない。
 去年の今頃、あの地獄をまだ知らない俺はちょっと楽しみとかなんとか楽観的に考えていたけど、そんな気持ちは初日で吹き飛んだ。
 そんな地獄の合宿がスタートする季節が今年もやって来た。
 ま、強くなる為に頑張るけどさ。

「流石に去年よりは体力も付いている筈だから、多少はマシになると信じたいよ。倉持なんて最後には吐いてたし」

「あれは忘れろ。オレだって純さんに騙されておにぎり食わなきゃ耐えれたっての」

 俺もいっぱい食べたけど吐かなかったぞ、と言うと二人から鉄の胃袋は黙ってろと言われた。
 解せぬ……。

「そういえば今日だよな。あれ」

 あれ、ね。
 それだけで何を言っているのか理解する。
 合宿の前に決して避けては通れないのが、ベンチ入りメンバーの発表だ。
 それが今日の練習終わりにある。

 三年生にとっては次が最後の大会であり、今回の発表で名前を呼ばれなければ実質的に夏を待たずに引退ということになる。
 だからこそ今はメンバーに選ばれようとみんなが必死になってアピールしている真っ最中で、必死さだけで言えば先輩たちは鬼気迫るものがあった。
 そんなピリついた空気に一年生たちが戸惑っているのをよく見かける。

「南雲は誰が上がってくると思う?」

 ベンチの空きは二つ。
 なので二軍から2人が昇格することになるんだけど、誰が上がってくるのか楽しみ反面、ベンチ入り出来なかった三年生のことを思うと……ちょっと複雑だ。
 そう思いながらも俺は誰が一軍に上がるか考えを巡らせた。

「うーん、小湊弟は多分確定だな。あの野球センスの塊みたいな奴を一軍に入れない理由は無い。あれなら十分即戦力になる」

 バッティングにしろ守備にしろ、弟くんは上級生と比べても頭一つ抜けている。
 練習試合でも結果を出しているらしいから昇格するのは間違いない。
 スタミナが多少不安ではあるが、レギュラーには亮さんがいるので基本的には代打としての起用になるはず。
 だから体力的な課題は大して問題にはならないだろう。

「ああ、それはオレも同感だな。少なくとも技術だけなら既に一軍レベルの実力はありそうだった。あとはどれだけ気持ちを強く持てるかだろ」

「亮さんの弟なら大丈夫じゃね?」

 負けん気はチームで一番だからね、亮さん。

「でも性格とかあんまり似てないぜ。まぁ、案外ああいうタイプの方が気が強かったりするから、そこまで心配はしてねーけど」

 そういえば沢村と降谷、それから同室の金丸とは最近よく話すんだけど、まだ弟くんとは喋った事ないんだよな。
 向こうも大人しい性格だからかあんまり近付いて来ないし。
 一軍に上がったら一度こっちから話しかけてみようかな。

「で、残り一人は?」

 本音を言えばその最後のひと枠は引退する三年生の誰かを、と言いたい。
 だけどこの青道では学年に関係なく実力で選ばれるので、全学年から今のチームを強化できる選手が昇格することになる。
 だとすると……。

「上がって来たら面白いって思うのは、沢村かな」

「沢村か。確かに珍しいタイプだけど、今は降谷も入れてピッチャーが4人も居るんだぜ? それに加えて沢村ってのはちょっと考えにくくないか?」

「俺は外野も守れるし、降谷だって外野の練習に参加してるからな。だから絶対に無い、とは言い切れないと思うぞ」

 降谷はバッターとしても中々に良いセンスをしている。
 肩の強さは言うまでもないし、フライをミスなくキャッチ出来るようになれば外野手としても十分使えるだろう。
 投手4人のうち2人が外野を守れるとすれば、そこに投手を追加で投入するのもあり得なくはない。
 トーナメント戦では出来るだけ登板する回数を少なくした方が勝ち進めるのだから。

 

 

 そんな俺の予想は見事に的中し、一軍への昇格を果たしたのは小湊 春市、沢村 栄純の一年生の2人だった。

 南雲 太陽 (2年 夏合宿前)
 球速160キロ
 コントロールB
 スタミナA

 フォーシーム、ツーシーム、スライダー7、高速スライダー3、カットボール3、チェンジアップ3、スプリット5、カーブ4

 弾道4 ミートC パワーA 走力C 肩A 守備C 捕球B

 真・怪童、怪物球威、変幻自在、ドクターK、ド根性、鉄人、ミスターゼロ、闘魂、エースの風格、ディレイドアーム、キレ◎、打たれ強さ○、勝ち運、パワーヒッター、人気者

 

   

スポンサーリンク

タイトルとURLをコピーしました