ダイジョーブじゃない手術を受けた俺168

 背番号1 南雲 太陽
 背番号2 御幸 一也
 背番号3 結城 哲也
 背番号4 小湊 亮介
 背番号5 増子 透
 背番号6 倉持 洋一
 背番号7 門田 将明
 背番号8 伊佐敷 純
 背番号9 白州 健二郎
 背番号10 丹波 光一郎
 背番号11 滝川・クリス・優
 背番号12 宮内 啓介
 背番号13 坂井 一郎
 背番号14 楠木 文哉
 背番号15 日笠 昭二
 背番号16 田中 晋
 背番号17 川上 憲史
 背番号18 降谷 暁
 背番号19 小湊 春市
 背番号20 沢村 栄純

 これが今年の夏を戦うメンバーだ。
 以前から変わったのは1年が三人も加わったことと、レフトのポジション争いに坂井先輩が敗れて門田先輩がレギュラーになったこと。
 それから御幸がクリス先輩とのレギュラー争いに勝利して名実共に青道の正捕手になったことである。

『お前に追い付くには時間が足りなかった。……いや、単純にお前の努力が俺を上回ったんだ。胸を張れ。青道の正捕手はお前だ、御幸』

『クリス先輩……!』

 そんな会話もあって御幸のやる気は天井知らずに上がり続けている。
 ここ最近は目に見えて分かるくらい張り切って練習しているよ。               
 俺は俺で再びエースナンバーを貰ったことでテンションが上がっているし、早くこの感情を試合でぶつけたいという思いは同じだろう。

 それと監督から記録員として藤原先輩が選ばれて試合用のユニフォームを受け取っていたな。
 監督も中々粋なことをする。
 よほど嬉しかったのか藤原先輩は涙ぐんでいて、これまでの献身的な支えがきちんと評価されたようで俺も嬉しかった。
 藤原先輩を甲子園へ連れて行くという約束は既に果たされているが、今度はもっと近くで、全国優勝するその瞬間を見せてあげようと思う。

 勿論、他のマネージャーたちも一緒にね。

 ◆◆◆

 強烈な太陽の光が容赦なく降り注ぐ中、この明治神宮球場に東京の高校球児たちが勢揃いしている。
 相変わらずどこを見てもむさ苦しい男ばかりで最悪だ。
 おまけに今日の気温は去年よりも高いらしく、この暑さなら誰か倒れてもおかしくないほど劣悪な環境である。

「毎回思うけど開会式って絶対いらないよな。特にこの季節のは軽く殺意すら覚える」

「おいおい、誰が聞いてるか分からないんだから物騒なこと言うなよ。まぁ、開会式がいらないってのは俺も同意だけど」

「いっそ誰かがぶっ倒れたら中止になるんじゃね?」

「後日に仕切り直しになるんじゃねーか?」

「鬼かよ」

 暑さを紛らわす為にそんなことを御幸と話していると、思ったよりも開会式は早くに終わって日陰に退避することが出来た。
 ふぅ、助かった。
 危うく俺が倒れるところだったぜ……。

 そして流れるような動きで自販機でスポドリを買って飲むと、大量に汗をかいていたせいか信じられないくらい美味く感じた。
 
「うまい! ……って、降谷。お前大丈夫か?」

降谷が沢村に肩を貸して貰いながら、半ば引き摺られるように歩いているのが見えたので、俺は思わずそんな声を掛けた。

「人に酔いました……」

 あー、そういえば降谷は北海道からこっちに来てるんだったっけ。
 北海道の夏と東京の夏では天と地ほどの差があるだろうし、これからもこの暑さの中で試合しないといけないのは大変そうだ。

 しっかし、本当にしんどそうだな。
 白目まで向いてんじゃん。

「ほら、飲みかけで良かったらやるよ。俺のスポドリ」

「あ、ありがとう、ございます……」

 片手に持っていたペットボトルの残りを降谷に渡してやると、脱水状態だったのか俺以上の勢いで一気に飲み干した。
 こいつ単純に水分不足だっただけじゃねーの?

「沢村と小湊は大丈夫か?」

「うっす。地元の夏とそんな変わらないんで今のところは大丈夫っス」

「俺も降谷君よりはマシですかね」

 こっちの二人はまだ余裕ありそうだな。
 他の面子もしんどそうにしているのは何人かいるが、降谷みたいに一人で歩けないほどではない。

 うーん、こればっかりは慣れるしかないしなぁ。
 今よりも体力を付ければ多少は楽になるだろうけど、流石に今からじゃ今年の大会には間に合わないし。
 来年までの課題だな、これは。

「ほら、もう少し頑張れ。あとはバスで帰るだけだからな」

「はい……」

 沢村が大変そうだったので俺も肩を貸して一緒に降谷を運んでやった。

 そのあと、もはや恒例となりつつある成宮が俺に宣戦布告みたいなことをやりに来たのだが、すぐに向こうのキャプテンに回収されていった。
 開会式で俺に何か言ってくるのはもう慣れたものだ。
 いよいよ大会が始まったとさえ思える一幕である。

 

   

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