ダイジョーブじゃない手術を受けた俺1

 大会から数週間が経ち、俺は東京のとある高校を見学しにやってきていた。

「へぇ、ここが青道高校の練習場か。中学のときの練習場とは比較にならないくらいスゲェな」

 視線の先には広大な土地に広々としたグラウンドが広がっている。
 練習機材なんかもかなり充実しているようだし、何よりもそこで練習に打ち込んでいる選手たちの顔が真剣そのもので、強豪校と言われても納得するような光景だった。

 高校と中学では明らかにレベルが違う。
 こんなチームが後ろを守ってくれるマウンドに立てれば、さぞかし楽しい野球が出来るだろうな。
 今すぐにでも俺も混じって一緒に野球をしたいと思わせるだけの光景だった。

「どう? 気に入ってもらえたかしら。あっちには雨天時のための屋内練習場もあるし、ウチの部員の半数は寮で生活しているの。高校球児にとっては最高の設備が揃っていると自負しているわ」

 そう言って声をかけてきたのは、この青道高校のスカウトである高島 礼という女性だ。
 彼女は俺を特待生として青道に来ないかと誘ってくれた人であり、巨乳の美人さんでもある。
 何でもこの前の大会での俺のピッチングを見て、俺こそが世代でナンバーワン投手だと確信してくれたらしい。
 そして、いずれは球界を代表する選手になれる逸材だと絶賛してくれた。

 いやー、そこまで褒められると嬉しいもんだよ。
 高島さんみたいな美人にべた褒めされると、健全な男子中学生ならあっさり籠絡されてもおかしくはない。
 俺も例に漏れずホイホイと付いてきてしまった。
 もちろん、後悔は全くしていないけどさ。

「想像以上に面白そうな所ですね。設備もそうですけど、選手全員が上手くなるために全力で練習している。このレベルでも甲子園には届かないんですか?」

「確かにウチはここ数年甲子園には出場できていない。でも、実力だけなら甲子園出場校にも劣らないと断言できるわ。打の青道と呼ばれるほどの得点力は、高校野球の中ではトップクラスだと思っているから」

「そりゃ凄い」

 さっきから気持ちのいい快音が響き続けている。
 バッティングピッチャーをしている投手もそこそこ良い投手なんだが、そんな人からヒット性の当たりやらホームランやらを量産していた。
 高島さんの言うことが決して嘘ではないという証拠だ。

 そんな凄い援護があれば、俺たちピッチャーはきっとのびのび自分の投球に専念出来るんだろうな。
 ま、俺はバッティングにも自信あるけどね!

「打撃力が高いのは分かりました。一軍の投球練習って見せてもらえます?」

「フフッ、やっぱり投手だから気になるわよね。もちろん良いわよ。付いてきて」

「はーい」

 高島さんに案内されてブルペンが見える場所に到着すると、そこには四人の投手が投げ込みを行っていた。
 右投手が3人と左投手が1人。

「あの中でエースは誰なんですか?」

「一番右で投げている子が、今のチームのエース候補よ」

 えーっと、一番右の人は……だいたい130キロくらいか?
 この中で唯一の左投手の人がエース候補らしい。
 コントロールも悪くないようで、変化球は縦に落ちるフォークとキレのあるスライダーを投げている。

「ナイスボール! だいぶ調子が上がって来てますよ!」

 そのエース候補の球を受けていたキャッチャーが声を上げた。
 にしても、あのキャッチャーの人はずいぶんキャッチング技術が高いな。
 他の選手とは比べ物にならないというか、一人だけプロが混じっているんじゃないかと思うくらい別格に感じる。

 どちらかといえば、俺はピッチャーの人よりもあのキャッチャーの方が気になった。

「高島さん、あのキャッチャーは誰ですか?」

「あれはクリス君ね。本名は滝川・クリス・優。まだ一年生なのに、入学直後から青道で正捕手の座を獲得した超高校級のキャッチャーよ」

「あれが一年……」

 へぇ、俺の一つ上か。
 なら青道に入れば、そんな凄いキャッチャーに一年半も受けてもらえるってことだな。
 最高かよ。

 ただ、このブルペンでも全ての選手が全力で練習に取り組んでいるようだが……向こうの打撃や守備と比べると数段落ちるように見えた。
 もちろんレベルが低いって訳じゃないし、むしろ高いんだけど、グラウンドで見た迫力が凄すぎて物足りなく感じてしまう。

 中坊の分際でかなり失礼だけど、野手と比較してあんまり投手は充実していないのかな?
 俺のそんな疑問を表情から何かを読み取ったのか、それを見た高島さんが苦笑した。

「さっき言った通り、青道の打撃力は高い。でもその反面、長年投手力に悩まされてきたチームでもあるの。正直に言えば投手のレベルはそれほど高くないわ。実際、点の取り合いになる試合は結構多いし。だからこそ、青道には南雲君の力が必要なのよ」

 なるほど。
 つまり青道高校は極端な打高投低なのか。
 圧倒的な打撃力はあるけど、その分相手チームにも打たれるから、結局は点の取り合いをするって感じになると。

 何それ……スッゲェ燃える!
 そんなチームでエースとして登場すればヒーローじゃん!
 投手として、そんなシチュエーションに燃えないわけがない!
 想像するだけで笑みがこぼれてしまう。

 うん、これはもうどこの高校に入学するかは決まったな。

「それじゃ、俺が入れば青道は日本一になれますね」

「……という事は青道に入ってくれると思って良いのかしら?」

「ええ、もちろん。あのクリスって先輩に言っておいてください。半年後を楽しみにしてろって」

「フフッ。ええ、伝えておくわ」

 とりあえず、青道に入学するまでに自身の肉体改造をしなければならない。
 母さんにも協力してもらって、バランスの良い食事を大量に作ってもらおう。
 それからウェイトトレーニングで筋肉を増やして、ランニングで体力と下半身の力を底上げする。

 シニアでの試合は基本的に7回までだから、今まではそこまでスタミナが問題になることは無かったけど、高校野球では9回まである。
 終盤のその2回はかなり大きいはず。
 それに備えて今のうちの体力付けておかないと、試合どころか練習にも付いていけないかもしれない。

「――ははは、やる事がいっぱいあり過ぎて楽しみだ! あ、高島さん。俺は今から練習してくるから、もう帰るね。ばいばい!」

「え、ちょっと南雲君!?」

 後ろから高島さんの呼び止める声が聞こえてきた気がするが、この湧き上がってくるワクワク感は止められない。
 こうして俺は東京の青道高校に進学することを決めたのだった。

 

 南雲 太陽 (青道入学時)

 急速145キロ
 コントロールB
 スタミナC

 フォーシーム、ツーシーム、スライダー2、カットボール1、チェンジアップ2

 弾道4 ミートD パワーB 走力C 肩A 守備C 捕球B

 怪童、怪物球威、キレ○、打たれ強さ○、奪三振、勝ち運、闘志、パワーヒッター

 

   

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