ダイジョーブじゃない手術を受けた俺34

――ズバンッッッ!

 荒々しく突き進んでいった直球がミットに突き刺さった。
 轟音が響き、近くにいた選手が何事かとこちらへ視線を向け、なんだまたお前かと言わんばかりに練習に戻っていく。

「ずいぶん良い音が鳴るな。見ていて気持ちがいい。フォームも以前のまま変わっていないようだし、後は指先の感覚を取り戻せば今まで通り……いや、それ以上のピッチングが出来るようになるだろう」

 俺が投げている横には、そう言って頷くクリス先輩がいた。
 久し振りの硬球を使った練習でフォームを崩すといけないからと、今日は肩のリハビリへ行く前に俺のピッチングを見てくれることになったのだ。
 客観的に見てくれる人が居てくれると俺も安心して投げられる。
 特に、クリス先輩のアドバイスはこれ以上なく信頼できるからな。

「うーん、でもなんか前と投げる感覚が微妙に違うんですよね。なんというか、こう、肩が動きすぎるというか……ボールも思ったところに中々行かないし」

「肩が軽い、という感じか?」

「あ、そうですそうです。そんな感じですね」

 肩が軽い。
 いや、軽すぎてコントロールが効かないのだ。
 それに指先の感覚もかなり鋭くなっていて、ストレートも変化球もキレが半端じゃなくなっている。
 ストライクゾーンには狙えば入るだろうけど、これじゃあボールの出し入れとか精密なコントロールは出来そうにない。

 俺のピッチングスタイルは力で押して技術で撹乱する感じなんだが、これは一日くらいで修正するのはほぼほぼ無理な気がする。
 明日の試合もコントロールに多少の不安を抱えたまま臨むことになるだろう。
 というか、慣れるまでしばらくの間は力押し一辺倒になりそうだ。

「と、いう訳だ御幸。明日の試合はそういうリードで頼む。細かいコントロールはほとんど出来ないから、それを考慮した配球をしてくれ」

「それは良いんだけど……お前ってここ最近は投げ込みしていなかったんだよな?」

「もちろん」

 俺が頷くと、御幸は少し驚いたような表情を浮かべた。

「それでこの球とか、お前の身体ってマジでどうなってんだ? 普通、二週間も期間が空いてたら少なからず球速は落ちるもんだろうが」

「確かに球速は少し速くなっている気がするけど、コントロールがここまで壊滅的だとプラマイゼロくらいだと思うぞ」

「壊滅的って……今のでも高校生にしては結構良い方なんだぜ?」

 そうは言っても、ピッチャーってのはキャッチャーが構えた所に投げ込めてなんぼだろう。
 どれだけ速い球を投げられても今みたいにボール一個分もミットが動いていたら話にならないし、こんなの未熟もいいところだ。
 現状で満足しているような選手に未来はない、少なくとも俺はそう考えている。
 と、内心でまだまだだなと思っていたら、何故かクリス先輩と御幸がやれやれといった様子で俺の方を見ていた。

「南雲、それは絶対に他の投手陣には言うなよ。確実に自信をなくす」

「そうだぞ。誰でもお前みたいに、バカ高い目標がある訳じゃないんだからな?」

「えー? てか今、口に出してましたか?」

「言わなくても顔に書いてあるぞ」

 クリス先輩の言葉に、うんうんと頷く御幸。
 まじか。
 試合中だと割とポーカーフェイスも出来るんだけど、
 チームメイトに嫌われたい訳じゃないし、そういうのは気を付けないとな。

「――って、今はそんな話よりも今の身体に慣れる方が先だ! 御幸、早く座ってくれ。まだ変化球だって全然投げてないぞ。お前もまだ満足してないんだろ?」

「あいよ。好きに投げな」

 うっかり話が逸れてしまったが、今はお喋りする暇なんてない。
 明日試合だから球数はそんなに投げられないけど、その分一球一球丁寧に時間をかけて調整する必要があるからね。

 そして、クリス先輩見守られながらピッチングを再開する。
 うーむ、やはり変化球は以前よりもキレが増しているんだが、こちらはフォーシームやツーシーム以上にコントロールが効かない。
 流石に明後日に方向に飛んで行くことはないけど、何球かは甘く入ってしまうな。
 ま、ボールにキレが増している分、そう簡単には打たれないだろうけど。

「お前の場合、コントロールは感覚を取り戻せばそのうち良くなるさ。問題はそれを捕るキャッチャーがすこぶる大変だってことくらいだよ」

「なら問題無いですね。御幸が必死こいて練習すれば良いだけなので」

「聞こえてんぞ。まったく、簡単に言ってくれるぜ……」

 御幸のぼやきを聞いていたクリス先輩が苦笑した。

「御幸、南雲とのバッテリーはこれ以上ないくらいに大変だろう。だが、それでも得られる物は計り知れない。大事にしろよ。同じ捕手として、俺もアドバイスくらいはしてやる。もっとも――俺の怪我が治ったら容赦なくレギュラーを奪ってやるから覚悟しておけよ?」

「ははは……お手柔らかに。でも、俺だって負けるつまりはありません。その為に俺は青道に来たんですから」

 頑張りたまえ。
 というか、頑張ってくれないと俺が困る。
 俺はまだまだ成長する予定だから、これくらい捕ってもらえないと信頼し合えるバッテリーにはなれないだろう。
 それに、俺に食らいついて来ようとする気概がある御幸なら、何も心配は要らないと思うしね。

 そうして時間をかけてゆっくり調整していき、俺は翌日の練習試合のマウンドに立ったのだった。

 南雲 太陽 (肉体改造後)

 球速152キロ
 コントロールC (B)
 スタミナA

 フォーシーム、ツーシーム、スライダー3、高速スライダー3、カットボール1、チェンジアップ3

 弾道4 ミートD パワーA 走力C 肩A 守備C 捕球B

 怪童、怪物球威、ド根性、キレ◎、緩急○、ケガしにくさ○、打たれ強さ○、奪三振、勝ち運、闘志、パワーヒッター、人気者

 

   

スポンサーリンク

タイトルとURLをコピーしました