ダイジョーブじゃない手術を受けた俺124

 今日はクマさんや東さんたち三年生の卒業式だ。
 先輩たちが卒業するのは目出度いことなので別に悲しくはないが……会えなくなる寂しさはある。
 これまでは放課後や休みの日には何度か顔を出してくれていたから、引退したとは言っても思っていたよりは顔を合わせる機会は多かった。

 しかし、卒業した後はそれも難しくなってしまうだろう。
 進学や就職でそれぞれの道に進めば、俺たちの練習を見に来てくれるような時間は取れないくらい忙しくなるはずだ。
 こればかりは仕方ないことだとは理解しているが、数ヶ月間とはいえ一緒のチームでプレーして人たちとの別れは色々と思う所がある。

「今日で先輩方は卒業っすか……東先輩、やっぱり今からでも留年しません? そうすれば試合には出られないけどもう一年学校に通えますよ」

「アホか。こっちはもうプロで野球することが決まっとんねん。誰が留年なんてするかい」

 東先輩は既に球団と契約を済ませてプロの野球選手となっているから流石に駄目か。
 ちょっとだけ本気だったんだけどな。
 ま、この学校からの唯一のプロ入り選手を大人たちが留年なんてさせる訳ないだろうから、そもそももう一年遊ぶのは無理である。

 三年生の中でプロ入りするのは東先輩だけだが、他にも大学で野球を続けたりする人は大勢いるし、また一緒にプレー出来る機会だってきっとあると思うようにしよう。

「でも東先輩がプロか……何故クマさんには声が掛からなかったのかが不思議だ」

「失礼なやっちゃな!?」

「だって先輩また太りましたよね? 練習をサボっている訳でもないのに、なんでそんなにも太っちゃうんですか。このままだとプロどうこう言う前にダイエットから始めないといけませんよ?」

 先輩の身体は夏の大会以降、横に大きくなる一方だった。
 プロのキャンプに参加すれば何か変わるかもしれないと思っていたが、結果は見ての通り非常に残念な結果に終わっている。
 これだけお腹が出ているとインコース低めギリギリに投げられればボールに当てることも出来ない筈だ。
 パワー自体は上がっているんだけどね。

「……飯が美味いんやからしゃあないやろがい」

「あはは、そんなに拗ねないでくださいよ。東先輩ならきっとプロでも活躍出来ますって」

「ワシの腹を掴みながら言うなや!」

 このプニプニ感は癖になる。
 最近ではクマさんよりも熊っぽい体型だ。
 今度ハチミツでもプレゼントしようかなと思わないでもない。

「あんまり東をからかってやるな。これでも自分の体重を気にしてるんだ」

「あ、クマさん」

 東先輩で遊んでいるとクマさんが卒業証書を片手に現れた。
 俺はお腹の脂肪を掴んでいた手を離してクマさんの元に駆け寄る。

「クマさんは大学ですよね。俺ももしかしたらそっちに行くかもしれないんで、その時はよろしくお願いしますね」

「お前なら十分にプロでもやっていけると思うが、高卒でプロには行かないのか?」

「うーん、まだ考えていないんですよね。プロに行くか、それとも大学で野球をするか。どっちも面白そうだし」

 全国の頂点に立ったら俺も自分の将来について少しずつ考えていこうとは思っている。
 それまでは面倒だから保留だ。

「そうか。お前の人生なんだからよく考えろよ。俺も相談くらいには乗るからな」

「ありがとうございます。頼りにしてますよ」

「……ワシとの対応に差がある気がするが気の所為か?」

 東先輩が何か言っている気がするがそれこそ気の所為だろう。

「卒業おめでとうございます。また一緒に野球しましょうね?」

 

 ◆◆◆

 

 卒業式が終わり三年生たちが学校から居なくなった後も俺たちの野球生活は続いていく。
 他校との練習試合も解禁され、本格的にセンバツで戦う為の準備が始まった。
 身体が大きくなったことによる違和感もすっかり解消したし、今では更に成長出来る余地が見えてワクワクしている。

 気になる練習試合の勝敗だが……連戦連勝。
 相手チームは今回のセンバツには選ばれなかった強豪校ばかりだったが、そんなチームに負けなしの成績を叩き出したウチの勢いは凄まじいともっぱらの評判だ。
 俺を含め、皆んなの調子は最高潮である。
 このままセンバツを勝ち進み、必ず全国の頂点に立ってみせよう。

 球速156キロ
 コントロールB
 スタミナA

 フォーシーム、ツーシーム、スライダー5、高速スライダー3、カットボール3、チェンジアップ3、スプリット3、カーブ3

 弾道4 ミートD パワーA 走力C 肩A 守備C 捕球B

 怪童、怪物球威、変幻自在、ドクターK、ド根性、鉄人、ミスターゼロ、闘魂、エースの風格、キレ◎、打たれ強さ○、勝ち運、パワーヒッター、人気者、三振

 

   

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