4月2日。
いつの間にやら月が変わっており、知らぬ間に俺は二年生になっていたらしい。
とはいえ、今日はセンバツ大会決勝戦の日なので自分の学年が一つ繰り上がっていた事など些細なことである。
今はそんな事よりも試合の方がずっと大切だ。
『この試合のマウンドに上がるのはやはり、南雲 太陽! これまで多くのバッターから三振を奪い続け、遂に得点を許すことなく決勝まで上がってきた驚異の天才ピッチャー。さぁ、今日は一体どんな投球を見せてくれるのでしょうか!』
マウンドから周囲を見渡せばビッシリと埋まった観客席が見えた。
試合が始まる前にスマホへ母さんから連絡があって、二人は約束通り今日の決勝戦に来てくれているとの事だったので、この満員の客席のどこかで両親が見てくれている。
わざわざ応援に来てくれたのだから生半可な試合は見せれないし、二人には青道が勝つところをしっかりと見せてあげたいと強く思う。
今までだって決して手を抜いていた訳じゃないが、それでもより一層気合いが入るというものだ。
「気ぃ抜くんじゃねぇぞ! オラァ!」
「うがっ!」
「3点までは許すよ。でも、それ以上は死刑ね」
「ヒャハハ! 亮さん、それ全然冗談に聞こえねーっス!」
バックからはそれぞれなんとも言えない個性的な激励の言葉が飛んできた。
「──俺たちを信じろ、南雲」
そして、一塁側から聞こえてきたその言葉は特に俺の耳に残った。
決して大きい声ではなく、むしろ観客席からの声援の方が大きい筈なのに、不思議と哲さんのその声は俺を安心させる。
背中にエースナンバーを背負うのはとても重い。
中学の時とは比較にならないくらいの重さがこの数字にはある。
それが心地良いとも思うが、やっぱり後ろを守っているのがこの人達だからこそ、余計なことを考えることなく前を向いて投げ続けられるのだ。
俺がこのチームを負けさせたくないと思うのはそれが理由なのだろう。
試合への興奮とエースとしての責任感、自分が今持っているもの全てをボールに込め、一年間共に成長してきた相棒が構えているミットへと投げ込む……!
全身の力を指先へと集結し、一気に解き放った。
投げた瞬間に今までに感じた事のない手応えを感じたそれは、俺が今まで投げていたフォーシームよりも遥かに理想的な直球になると、ボールが手から離れた瞬間に直感する。
唸り、空気を切り裂き、あり得ないほどノビていくフォーシーム。
まるで雷が落ちたような音と衝撃を発しながらミットに突き刺さった。
ミットの中に収まった後でさえ未だ暴れているような気がする。
ほとんどド真ん中に近いコースにもかかわらず、それでもバッターは手が出せなかった。
160キロ。
電光掲示板にはっきりと映し出されたその数字は、観客達はどよめかせるのに十分過ぎる衝撃だったと思う。
これまでの試合……いや、これまでの人生でそれは間違いなく最高のボールだったと胸を張って言える。
「す、ストライク!」
少し遅れて球審が判定を下すが、正直なところ俺はあまりその声が聞こえていなかった。
今日、俺はまた一つ壁をブチ壊した。
それに対する喜びと達成感、そして試合への闘争心で俺の感情は埋め尽くされていたのだから──。
<p style=”text-align:right;”>『ダイジョーブじゃない手術を受けた俺』~一年生編~完結</p>
◆◆◆
球速160キロ
コントロールB
スタミナA
フォーシーム、ツーシーム、スライダー6、高速スライダー3、カットボール3、チェンジアップ3、スプリット4、カーブ3
弾道4 ミートD パワーA 走力C 肩A 守備C 捕球B
真・怪童、怪物球威、変幻自在、ドクターK、ド根性、鉄人、ミスターゼロ、闘魂、エースの風格、キレ◎、打たれ強さ○、勝ち運、パワーヒッター、人気者、三振