1 ショート 倉持
2 セカンド 小湊
3 キャッチャー 御幸
4 ファースト 結城
5 ピッチャー 南雲
6 センター 伊佐敷
7 サード 増子
8 レフト 門田
9 ライト 白州
レフトのレギュラーは最近の試合では坂井先輩ではなく、同じく三年の門田という先輩がスタメンに選ばれることが多い気がする。
俺もたまにレフトのポジションで出場することもあるけど、今日は先発投手に選ばれたので、ワンチャン4回以降レフトで試合に出続けられるかもしれない。
1 センター 菊永
2 レフト 塚本
3 セカンド 立浪
4 サード 大前
5 ショート 安達
6 ファースト 伊藤
7 ライト 笹井出
8 キャッチャー 高見
9 ピッチャー 天久
次に市大三高にオーダー表を見てみると、ピッチャーの欄には天久という名前が記されていた。
天久といえば昨日クリス先輩から聞いていた名前で、真中さん以上の才能を持っているというピッチャーだ。
どうやら今日の先発はエースではなくその天久とやらが出て来るらしい。
単純に都大会だから温存しているのか、それとも……俺たちを相手にどこまでやれるのか試金石にでもする気なのか。
どちらにせよ天久の実力が気になるな。
クリス先輩からの情報ではキレのあるスライダーが決め球らしいが、出場した試合の数が少ないのであまり多くはわかっていない。
「ほら、あそこにいるのが天久だよ。結構良い球を投げるやつだぜ」
御幸の指差す方に視線を向けると、俺たちとは反対側のブルペンで坊主頭の長身な男が投げ込みを行なっていた。
その様子を見る限りでは噂通りかなり良い球を投げている。
実際に打席に立ってみないと正確にはわからないが、少なくとも真中さん以上の素質の持ち主という噂もあながち間違ってはいなさそう。
その噂の出所がクリス先輩だったから最初から疑っていた訳ではないんだけどね。
「やるなぁ、あいつ。何で一年の時には無名だったんだ? あれだけの球を投げられるんだったら、秋にはかなりの戦力になってただろうに」
俺たち青道は以前市大三高を負かして甲子園への出場を決めた。
もしもあの秋の決勝で真中さんだけじゃなく天久もいれば、あの試合以上に苦戦を強いられていたはずだ。
あのレベルの投手を出し渋る訳もないし、本当に今まで何をやっていたんだろうか。
今になって急激に成長したとも思えないしね。
「さぁな。怪我とか?」
「ま、もしも怪我なら完治している事を願うよ」
「普通は逆じゃね? その方が楽に勝てるだろ」
「勝負するなら万全の相手の方がいいじゃん。その方が倒し甲斐があって良い」
「……さいですか」
俺の答えに呆れた表情を浮かべる御幸。
おいおい、そんな顔すんなよ。
当然だけど仮に手負いだろうと全力で叩き潰すさ。
コンディションを整えるのも本人の実力のうちだしね。
ま、今回は最後までマウンドで戦えないことが確定しているから、本格的にやり合うのは夏の本番になるだろうけど。
その時が今から待ち遠しいな。
今日はその日に向けての前哨戦ってところか。
「よしっ。いくぞ、お前ら!」
『応ッ!』
そして、哲さんの掛け声と共にレギュラーメンバーが走って整列に向かい、青道 対 市大三高の試合が始まった。
◆◆◆
後攻の俺たちは守備から始まる。
まだ誰にも踏み荒らされていないマウンドにゆっくりと上がり、土の感触を確かめるようにスパイクで軽く慣らした。
やっぱり先発は良いね。
なんかこう、リリーフの時より気持ちが引き締まる気がするよ。
そうしてマウンドを整えた後は投球練習だ。
大体7割くらいの力で投げ込んでいき、最後の調整をここで行う。
相手がそこまで強くないチームだとこの段階で威圧を掛けて心を折りにいくんだが、市大三高にそれをやってもほとんど効果は無いだろう。
俺の球は秋大の時に嫌というほど見てきたんだから。
却って球筋を見られかねない。
そして、俺たちが投球練習を終えると、主審の口からプレイボールが宣言された。
「プレイボール!」
市大三高のトップバッターが打席に入り、バットを短く構えているのが見えた。
そんな相手への初球、御幸のサインは……インコース低めへの真っ直ぐ。
審判のストライクゾーンの広さを確かめるような、ボールと判断されてもおかしくない場所へ投げ込めというサインを出してきた。
まったく、御幸のやつ初球から難しい指示を出しやがって。
ストライクゾーンギリギリへ正確に投げ込むなんて、俺じゃなかったら到底無理なサインだぞ。
今はマスク越しだからどんな顔をしているか全く見えないけど、恐らくあいつは今、ニヤニヤと俺のことを挑発するかのように笑っていやがると思う。
ここに投げてみろ、お前なら出来るだろ? ってな。
「お望み通り、投げてやるさ」
高い要求をするってことはそれだけ信頼されているってことだ。
なら、それにはしっかりと応えてやるのがエースとして、そして相棒としての義務だろう。
俺に与えられた時間は3イニング。
その少ない時間を全力で楽しもう。
マウンド立っている間は余計なことを考えず、観客席からの声援を背に、ただただ楽しい時間が過ぎていくのみである。
大きく振りかぶり、御幸が構えるミットへ、全力の直球をブチ込んでやった。