大筒木一族の最後の末裔39

「えーっと、やっぱりダンゾウ様はまだ俺のことを信用できないみたいですね」

 火影達が待機しているという部屋に入ってみると、三代目はともかくダンゾウと御意見番と呼ばれる二人の爺さん婆さんには鋭い視線を向けられた。

「当たり前だろう。お前は突如として木ノ葉に現れ、九尾の小僧と接触し、更には里の忍たちと順調に親交を深めていっているのだぞ? これで怪しまれない筈がなかろう。今すぐ捕縛しないだけ感謝してもらいたいくらいだ」

 そうやって言葉にされると確かにめちゃくちゃ怪しいけどさ。
 でも、俺に木ノ葉の忍となるか里から出て行くかのどちらかを迫り、前者を選ばせたのはあんたでしょうに。
 一度俺を受け入れると言ったんだから、最低限でも良いから信用する素振りくらいは見せて欲しいものだ。

 俺はただ木ノ葉の里が嫌いだっていうだけで、嫌いだからという理由でこの里を潰そうとかそんな過激な事は微塵も考えていないし、そんなに警戒する必要は無い。

「ナルトに何かするつもりならとっくにやってますよ。それに、もし俺がスパイならそんなまどろっこしい事はしませんて。そもそもここまで悪目立ちするスパイとかいます? ダンゾウ様も以前お会いした時にそう仰ってくれたじゃないですか」

「フンッ、貴様が怪しい事には変わりない。もしも怪しい行動を取ればすぐさま拘束される立場だという事を忘れるな。いっそ、今ここで本性を現してくれた方が楽で助かるくらいだ」

 いやいや、本性て何よ。
 実は俺ハーレムを目指してます、なんてめちゃくちゃアホっぽい事でも宣言すれば良いのか?
 シリアスな空気が流れるこの空間が一瞬で凍り付く光景が思い浮かぶ。

「スマンのぉ。どうもこの者達は心配性でな。年寄りのお小言だと思って受け流してくれ。それよりもカムイ、先ほどの手合わせは見事だった。お主があそこまで強いとは思わんだぞ」

 俺が返答に困っていると三代目が助け舟を出してくれた。

「あはは。ありがとうございます火影様。その様子を見る限りでは、少しくらいは俺のことを認めてもらえたと思ってもよろしいので?」

「勿論じゃ。此奴らも口ではお主の事を信用できぬなどと言っておるが、先ほど見せた腕前はちゃんと評価しておる。あとは時間が解決してくれるじゃろう。しばしの間は辛抱してくれ」

 ほっ、反応は上々って訳ね。
 よかったよかった。
 下手に能無し扱いされればどんな扱いを受けるかわかったもんじゃないから、腕を認められる程度にはアピールできたようで何よりだ。
 カカシ先生相手に頑張った甲斐がある。

 それから、えーっと、二人の後ろに立っている御意見番の二人。
 原作であまり登場する機会が無かったから名前がすぐには出てこないけど、この人達にも認められないといけないんだよな?

「あの、後ろにいるお二人は一体どういうお方なんですか?」

「おっと、ダンゾウはともかくこっちの二人とは初対面だったか。こっちが水戸門ホムラで、そっちがうたたねコハルじゃ。この里では御意見番として運営を手伝ってもらっておる。ほれ二人とも、いつまでも黙ってないで挨拶くらいせえ」

「水戸門ホムラだ」

「うたたねコハル」

 なんともまぁ簡素な自己紹介が返ってきた。
 偏屈なご老人という印象である。

「はぁ、頭の固い年寄りだ。気を悪くせんでくれよ。こやつらは少し神経質なだけじゃからのぅ」

「自分の素性が怪しいのは理解していますから大丈夫です。チャンスを貰えるだけ有り難い。あとはしっかり任務をこなして、少しずつ信頼を勝ち取っていきますよ」

「ホッホッホ、それは楽しみだな。お主ならばきっと素晴らしい忍になれるじゃろうて。準備が整い次第、お主には里の外での任務に出てもらう。主に抜け忍の討伐じゃ。当然危険が伴うが、先の戦闘で見せた実力があれば容易であろう。無論、里の者を供に付けるから安心せえ」

 三代目が言った『討伐』という単語に俺はピクリと反応してしまう。
 それはつまり、相手を殺す必要があるということ。
 いくら忍を付けてくれると言っても最後は俺がトドメを刺さねばならないのだろう。
 現代日本で生きてきた記憶が邪魔をして、どうしても忌避感を抱く。

「討伐……」

 しかし、俺は僅かに生じた恐怖を即座に打ち消した。
 出来る出来ないではなく、やるしかないのだ。
 殺人という前世での禁忌を犯さねば未来は無い。
 この世界で生きていくためには、他人の命を簡単に奪ってしまえる狂気を心の内に飼わなければ決して生き残れないのだから。

「出来ぬか?」

 どうせこの人たちには俺がまだ人を殺した事が無いなんてお見通しなんだろうな。

「いえ、やります。忍として生きるのであればいずれは通る道。何も問題はありません。何なら今すぐにでも行けますよ」
 
「そう慌てるでない。当然その任務での成果も期待しておるが、それらはあくまでも過程。本題は別にある」

「本題、ですか……?」

 任務が過程とは一体俺は何をさせられるのか。
 そんな一抹の不安を感じながら三代目の次の言葉を待つ。

「ああ、そうだ。実は半年後に砂隠れの里と合同で中忍試験を執り行う事になったんだが……カムイ、そこでお主には中忍試験へと臨み、見事中忍へと昇格してもらいたい」

 そして三代目はそう言い放つのだった。

 

   

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