大筒木一族の最後の末裔44

 任務を無事に終えた私は誰も居ないこの部屋に帰って来た。
 いつもはカムイが出迎えてくれたり私が出迎えたりするのだけど、しばらくの間はそんなやり取りは出来そうにない。
 ちょうど私と入れ違いになる形でカムイが任務に出発してしまったから。
 一人暮らしには慣れていた筈なのに、いつの間にか私は部屋の中に一人でいることが少し寂しく感じるようになっていたようだ。

「今頃カムイは任務中か……きっと大丈夫、よね?」

 詳しい内容は知らされていないけど危険な任務だとは聞いている。
 下忍として正式に木ノ葉の忍になったとはいえ、忍としてはまだまだ駆け出しだから少し心配ね。
 戦闘力が高いのは知っているし、優れた忍者であるカカシが同行しているから大丈夫だとは思うけれど……完全に不安感を払拭することは出来なかった。

 だってあの子、変な所で抜けている事があるから……。
 寝起きはよく寝惚けているし、放っておくと修行しかしないし、ナルトたちの面倒を見ているつもりで気付けば一緒になって遊んでいるような子。
 忍としての経験は明らかに無さそうで、だからこそ危険な任務から無事に帰って来れるのかがとても心配だった。

 そうしてカムイの居ない部屋で過ごすこと数週間。
 ナルト達も寂しそうにし始めているし、そろそろ帰って来て欲しいと私も思っていると、同行しているカカシから里に連絡があったみたい。
 あまりにも早い連絡だから一瞬嫌な予感がしたけど、どうやらそうではなく任務完了の報せだったようだ。

「──それにしても、今日帰って来るなんて急よね。まだ何の準備もしていないのに」

 連絡ではカムイとカカシの二人は無事に任務を達成し、今日にでも里に帰ってくると言う。
 大きな怪我も無くここまで早く終わらせた事に上層部は驚いていて、今は実力のある忍は何処へ行っても歓迎されるから、これでカムイに対する評価も上がるでしょうね。
 嬉しい反面、より過酷な任務を与えられるのかと思えば複雑な気持ちになる。

 まぁ、邪険にされるよりは遥かに良い待遇だし、カムイの実力ならば今回の任務のように上手くやっていけるだろうとも思う。
 私なんか一足飛びに抜かしていきそうでこっちもうかうかしていられない。
 だって少しくらい先輩として敬われたいじゃない。
 カムイは将来すごい忍になりそうだし、ね。

「うーん、ただ待っているのもなんか落ち着かないわ……」

 予定では二人が木ノ葉に帰ってくるのは数時間後くらい。
 それまで時間を潰す必要があるんだけど、私っていつもは何をしていたんだっけ? 
 流石に今から鍛錬するような気分でも無いし、どこかに出かけてしまうとその間にカムイが帰って来てしまうから外には行けない。

 あ、掃除でもしていようかしら。
 別に汚い訳じゃないけど何かしていないと落ち着かないし。
 そう思い立った私は部屋の掃除でも始めてみたんだけど、大して散らかっていた訳でもない部屋の掃除なんてすぐに終わってしまう。

 早々にやることが尽きてしまい、結局私は時計と睨めっこすることになった。
 そこから大体一時間くらいが経った頃、玄関のドアが開く音が聞こえてくる。

「紅さーん、いますかー?」

 聞き間違える筈がないその声。
 私は慌てて立ち上がり出迎えようとして……急に恥ずかしくなり敢えてゆっくりと玄関まで歩いて行く。
 会いたくて待ちきれなかったなんて歳でもないし、ここは大人の余裕をみせておかないとね。

「お帰りなさい、カムイ」

「……ただいま、紅さん」

 久しぶりに見るカムイの顔は私が知っているものよりもどこか大人びていて、少しだけ胸がドキリとした。

 

   

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