中忍試験。
初任務から月日が流れ、ついにこの日がやって来た。
未だに人を殺す感覚は慣れないけど、その度に紅さんに甘えているからか自分でも驚くほど心が軽い。
中忍試験もこの調子でさっくりと優勝したいものだ。
「カムイ、朝ご飯できたわよ」
「はい、今行きます」
試験に向けてチャクラを練る精神統一を行なっていたが、紅さんの声に返事を返してそれを中断する。
今更何をやっても大して変わらないけど、勝率は少しでも上げておきたいからね。
「おぉー、朝から豪華ですね。作るのも大変だったんじゃないですか?」
リビングに行くとテーブルの上には豪勢な食事がずらりと並んでいた。
朝ご飯にしては少し重たい気もするが、これからたくさんエネルギーを使わないといけないのでこのくらいあった方が助かる。
準備するのも大変だったろうに。
早起きして料理をしてくれた紅さんはやはり最高である。
「仕込みは昨日からやっておいたからそこまで大変じゃないわよ。それに、なんと言っても今日はカムイに頑張ってもらわないといけないしね」
「この料理を食べれば中忍試験なんて余裕で突破できそうな気がしてきます」
「フフッ、トーナメントは私も応援に行くわ。ナルト達と一緒にね。だからそれまでの試験でうっかり落ちたりしないでよ?」
中忍試験の流れは俺が知っている原作と同じで、筆記、実技の試験を勝ち抜いた者が本戦であるトーナメントに進めるというもの。
どうやら中忍へ昇格する為には本戦に出場する事が最低条件で、トーナメントでの戦いで上手く自分の持ち味を発揮し、中忍としての適性があることを証明できれば優勝しなくても昇格できるらしい。
もちろん優勝すれば余程の事がない限り昇格できる。
俺は火影であるヒルゼンに優勝しろと言われているから、今後の為にも一番を目指すけどね。
「紅さんが応援しに来てくれるなら尚更負けられないや。いただきまーす。……うん、美味い!」
「ならよかった。でも食べ過ぎないようにね?」
「ふぁーい」
「フフッ、その様子だと緊張はしてないのかしら」
「んぐっ……緊張、ですか? うーん、まぁ多少はしてますよ。下忍とはいえどんな伏兵が出てくるかわかりませんし、俺だけスリーマンセルじゃなく単独で試験に臨まないといけないみたいですからね。任務とはまた違ったプレッシャーを感じます」
他の受験者はチームで参戦するのだが、俺はただ一人で勝ち進まなければならない。
身体がガチガチになっているとまではいかないが、普段よりは変な力が入っているような気がする。
まぁ、実際に試験が始まればいつも通りになるだろうけど。
「カムイなら大丈夫よ。貴方の実力は既に上忍にも引けを取らないくらいなんだし、むしろ他の参加者たちが可哀想なくらい」
「相手が下忍とはいえ、流石にスリーマンセルで来られると俺でも危ないですって。今更ですけど、俺だけ一人で参加するなんて結構ひどいっすよね」
試験と言うのは名ばかりで、これは命を落とす可能性すらある危険な戦いだ。
相手が下忍だからと舐めていれば今の俺の実力だと足元をすくわれ、そのまま地獄へと一直線なんて事も十分にあり得る。
一対多数の状況なら尚更だろう。
いじめと言っても過言ではない。
「いやいや、アンタの実力があれば十分対処できるわよ。下忍のスリーマンセル程度で倒されるカムイなんて想像できないわ。大多数の受験者には体術だけでも余裕で圧倒出来るんじゃない?」
「ははは、ご冗談を」
思わず紅さんの言葉を信じてしまいそうになったが、俺なんてまだまだ未熟者だからな。
下忍といっても俺よりも長くこの世界を生きている連中だし、決して油断はできない。
今回の試験だって慢心せず最善を尽くすつもりでいる。
転生眼は当然封印しながらになるが、他の術は出し惜しみなく戦うことになるだろう。
「……冗談のつもりはないんだけど。ま、いっか」
今日という日の為に色々と準備してきた。
中忍になるのは俺の目標の第一歩だ。
正直、紅さんと一緒に暮らしているうちに段々とハーレムへの憧れが薄れていっている気がしないでもないが、途中で諦めるというのも情けない。
「紅さん。俺、絶対中忍になってみせるよ」
まずは中忍になって、その後に上忍へと昇格する。
そうすれば一応ハーレムへの道が開かれるらしいからな。
大筒木一族の祖に、俺はなる!!