蜘蛛を背にしてしばらく走り続けると、そう間も無く森の中に突然大きな建物が現れた。
ここが第二試験のゴール地点だ。
大丈夫だとは思うが、一応罠などにも警戒しながら正面の扉から中へと入っていく。
すると、そこで待ち構えていた優しそうな雰囲気のお兄さんに声を掛けられた。
「おっ、来たな。第二試験合格おめでとう! 外とは違ってここは安全だから、あとはゆっくり休むといい」
見るからにコミュ力が高そうな美丈夫だ。
原作では見たことが無いが、額当ては木ノ葉のもので、どことなく波風ミナトに雰囲気が似ている感じがする。
もっとも、瞳の色はともかく髪の色が濃い茶色だから他人の空似だとは思うが。
「ありがとうございます。お兄さんは次の試験の監督官ですか?」
「いやいや、僕は違うよ。僕の仕事はここで合格者を迎え入れるだけだ。君の名前は大筒木カムイ君だよね?」
「はい」
俺が返事をすると、美丈夫は手に持っていた紙に何やら書き込み始めた。
「他のチームはまだ全員外に?」
「いや、1組だけ既に到着しているよ。彼らは向こうの控え室で休んでいる筈だ」
「え、俺よりも先に着いたチームがいるんですか?」
「つい数分前にね。だから君は二番目だ」
てっきり俺が一番だと思っていたが俺よりも先にゴールしていた連中がいるらしい。
あの蜘蛛と一番最初に戦闘を始めたのは木ノ葉の三人組だったから、そいつらは恐らく蜘蛛と戦わずにここまで来ていることになる。
あの蜘蛛は警戒心が異常に高く、気付かれずに素通りするのはかなり難しいと思うんだが……一体誰だ?
「あ、ほらあの子たちだよ。君よりも早かったチームは」
お兄さんの指差す方に視線を向けると、そこにいたのは他里の忍だった。
あの額当ては確か雨隠れだった筈だが、三人が全員ガスマスクみたいなものを被っていて表情はおろか性別すらよくわからない。
多分男だと思うけど……一人だけ髪の長い奴がいるからもしかすると女かも。
ちなみに、何がとは言わんがぺったんこである。
「雨隠れの忍か。てっきり俺が一番乗りだと思ってたんですけど、一体どんな手を使ってここまで来たんですかね。お兄さん、教えてくれたりします?」
「ははは、ごめんねぇ。そういうのは駄目なんだ。僕たちが特定の下忍に肩入れするのは禁止されている。不公平になるからね。バレれば即失格だよ」
「それは失礼。あいつらがどうやったのか気になったんですけど……失格にはなりたくないので仕方ないですね」
下忍同士の情報交換は構わないが、中忍や上忍の手は借りるなということかな。
それを許してしまえば開催国である木ノ葉に有利すぎるし、大国の癖にセコいみたいな風評被害が出てくるのかもしれない。
やるとしてもバレずにやれって感じだと思う。
そこまでして知りたいわけでもないし、ここは大人しく引き下がろう。
「そうしてくれると僕も助かるよ。それに、心配しなくてもすぐにわかるさ」
「わかる? あぁ……次の試験で、ですか」
次の試験はタイマン勝負だ。
雨隠れの連中がどうやって蜘蛛の監視を搔い潜ったのか気になるのなら、そこで確認すれば良いという事らしい。
御尤もである。
「それじゃあお兄さん、俺はここで失礼します」
「うん、お疲れ様。この建物内にいてくれれば何処に居てもらっても構わないから。ただ、他の忍と争うことはしないようにね」
「了解です」
これ以上話していてもお兄さんの邪魔になりそうだったので礼を言ってその場を離れた。
雨隠れの忍たちに会いに行こうかとも思ったが、やめておく。
表情が見えないガスマスクの集団というのはどうも近寄り難い。
喧嘩になっても面倒だしな。
結局、俺は持ってきていた兵糧丸を齧りながら時間を潰すことにした。
その後しばらくすると、見覚えのある顔がこちらに向かってきていることに気付く。
「その……さっきは助かった。おかげで全員無事に試験をクリアできたよ。本当にありがとう」
そう言ってきたのは、つい先ほど俺の分身が助けた男だ。
どうやら無事にゴールまで到着できたらしい。
利用させて貰った身としては彼らが無事に合格出来て良かったと思う。
「ああ、いや、俺もお前たちが戦ってくれていたおかげでここまで来れたようなものだからな。お互い様だし気にしないでくれ」
「そうはいかないさ。おっと、そういえばまだ自己紹介もしていなかったな。俺の名前はコテツ。はがねコテツだ。いつか飯でも奢らせてくれ」
はがねコテツ?
うーん、聞いたことある気もするが原作キャラか?
わからんな。
「俺は大筒木カムイ。奢ってくれるならいつでも大歓迎だ」
お互いに握手を交わす。
後ろにいた彼の仲間たちとも目が合うと、向こうから会釈をしてきたのでこっちも頭を軽く下げておいた。
「仲間も無事みたいで何よりだよ」
「おかげさまでな。多少怪我を負ってはいるが、見ての通り簡単な治療はしたから次の試験にも出る」
「へぇ、それじゃあここからは全員ライバルって訳だ」
「もし戦うことになったらお手柔らかに頼む」
「それは無理」
俺がそう言うとコテツは吹き出して笑った。