ポイントルーラー14

「ではお先にお風呂をいただきますね」

「おう」

 雫は俺に断りを入れてから、この部屋にあるバスルームへと歩いていった。

 既に水道にガス、電気は止まってしまっているので、普通ならば風呂になど入れる筈もないが、そこは俺の万能スキルで解決できる。
 ポイントで交換できるアイテムの中に、『温泉石』というものがあったのだ。
 浴槽にそれを放り込むと、それだけで丁度いい湯加減のお湯を放出してくれるという非常に便利な代物である。

 ただ、どうやらそのお湯は飲料水ではないらしく、大量に飲み込むと腹を壊してしまうらしい。
 最悪、かなり重度の中毒に陥ってしまうのだとか。

 その説明を聞けば少しだけ怖いような気もするが、それ以上に風呂に入りたいという欲求が勝ったため、ほとんど躊躇うことなく使用することを選択した。
 多少飲んだだけでは全く問題ないみただし、気をつけていればそれほど心配はいらない筈だ。

 日本人にとって風呂は命というが、それは誇張でもなんでもなく、一日入っていないだけで恋しくて仕方なかった。
 やはり俺には風呂が必要不可欠のようだ。
 価格も使い捨てとはいえ5ポイントとかなり安く、それくらいで風呂に入れるのなら毎日の使用も考えているほどである。

 ちなみに、今この部屋を照らしている朧げな明かりを発している石もスキルで交換したものだ。

 コッチも5ポイントで交換でき、名称はたしか『発光石』とかいうものだった。
 効果は使用から約4時間だけ淡い光を放つという代物だ。
 コレも使い切りのアイテムで、手に持って『光れ』と念じると光り始めるのだが、一度光り始めると効果が切れるまでそのままらしい。

「それじゃあ雫も風呂に行ったし、俺はゆっくり交換するスキルを選ぶとしよう」

 雫が風呂に入っている間、俺は自身の強化をすることにした。
 ポイントで自分を強化していくことは俺の生命線だから、ここはケチらずにドンドン強化していくべきだろう。
 ただ、非常時のポーション用にある程度はポイントを残しておかないとな。

 そして、これが現時点での俺のステータスである。

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 秋月 千尋 20歳 男 レベル2

 種族:人間

 筋力:20
 耐久:20
 敏捷:20
 魔力:10
 魔耐:10
 精神:11

 ポイント:96819

[職業] ポイント使い

[装備] 鋼の槍・ミスリルの鎖帷子

[スキル] ポイント獲得・ポイント交換

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 ステータスは所持ポイント以外に変動はない。
 雫と一緒に下の階を回っている時にゾンビが二体ほど出現したが、それを倒してもレベルは上がらなかった。
 だから次の戦闘あたりでそろそろレベルが上がるかもしれん。

 心の中で『ポイント交換』と念じてスキルを発動させ、ポイントの交換画面を呼び出す。
 画面を出現させると、そのままスキルという項目をタップした。
 すると、ズラーッと大量のスキルの数々が画面いっぱいに表示される。

 あまりにたくさんの種類があるので、俺もまだ全ては確認できていないというのが現状だ。

 せめてもの救いは、『ポイント交換』の機能で絞り込みや並び替えができることだろう。
 この機能が無ければ『温泉石』だって見つけられなかったし、有用なスキルもほとんど確認できなかった筈だ。
 流石は俺の便利スキルである。

「うーん、やっぱり戦闘系のスキルは必須だよな。あ、でも成長補正系のスキルも捨てがたい……。それに、『鑑定』や『アイテムボックス』ってやつもかなり便利そうだ」

 俺の能力で交換できるスキルの種類は膨大で、用途がまったく分からないゴミスキルから、名前からしてロマン溢れる魅力的なスキルまで大量にある。
 そして当然、前者はかなり安いポイントで交換でき、後者はそれ相応に高額なポイントを要求されるので慎重に選ばなければならない。

 とりあえず、今交換できるめぼしいスキルの効果は以下の通りだ。

『格闘』:近接戦闘時に補正をかける。
『槍術』:槍の扱いに補正をかける。
『取得経験値上昇』:取得する経験値に補正をかける。
『鑑定』:他人のステータスを閲覧できる。
『アイテムボックス』:時間が止まっている亜空間にアイテムを保存できる。

 他にもまだまだ有用なスキルはあるが、今のポイントで交換するならこれくらいしかない。
 中には『聖剣エクスカリバー』みたいに馬鹿みたいな価格のスキルもあったが、それはたぶん俺が手に入れられることはないと思う。
 交換に必要なポイントが多すぎて、どれだけ現金や宝石とかを回収しても交換できる気がしないし。

「……よし、決めた」

 俺は悩みに悩み抜いた末に、『格闘』『槍術』『アイテムボックス』を獲得することにした。
 それぞれ『格闘』が10000ポイント、『槍術』が25000ポイント、『アイテムボックス』が40000ポイントとかなりの高額だ。

 合計で75000ポイントも消費することなってしまった。
 現金換算で750万という大金である。
 それだけあれば高級な外車が買えるぞ……。

 本当なら『取得経験値上昇』ってスキルは早めに手に入れたいところなんだが、今はそれよりも手っ取り早く戦力を上げることを優先した。
 死んだら元も子もないからな。

 まぁ何はともあれ、これで俺の残りポイントは21819ポイントだ。
 残りが10000ポイントくらいになるまでは、ステータスのパラメーターの方を上げるか。

 そうして強化した俺の最終的なステータスがこれだ。

 ==================================
 秋月 千尋 20歳 男 レベル2

 種族:人間

 筋力:20→25
 耐久:20
 敏捷:20→25
 魔力:10
 魔耐:10→13
 精神:11

 ポイント:10319

[職業] ポイント使い

[装備] 鋼の槍・ミスリルの鎖帷子

[スキル] ポイント獲得・ポイント交換・格闘・槍術・アイテムボックス

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 格闘や槍術のスキルにあった補正とやらの効果については、敵がいた方が分かりやすいだろうから明日モンスター相手に試してみよう。
 アイテムボックスの方は……

「――おぉ、スゲェ!」

 収納することを意識すると、手に持っていた槍が一瞬で消える。
 そして今度は取り出すことを意識すると、さっき消えた槍が再び手に戻ってきた。
 これがアイテムボックスの能力なんだろう。
 容量については今のところ分からないが、他のスキルと一緒に明日にでも検証しようと思っている。

 アイテムボックスの能力次第では、色々と悪だくみが捗ってしまうな。

「お待たせしました、秋月さん。お風呂どうぞ」

「あぁ、わかった」

 ちょうど雫が風呂から上がったので、俺も入るとしよう。
 風呂から上がったら、雫と明日の予定について話しておかないと。

 

   

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